音楽でふみだす一歩。ひきこもり,社会不安...
──ギターとボーカルのTさんお願いいたします。
──トークの中でLPWでは,おりていく生き方をさせてもらえる,と言われていますが,具体的にどのようなことでしょうか。
T)僕は無理に階段を上るような生き方をすると休まなくてはいけないので,階段を下りてもいいんじゃないだろうかと思うんです。元々できたことができなくなったり,苦しんだり,本当は外に出たいけれど出られなかったりとか。
LPWでは降りていく生き方をさせてもらえる,できないことがあっても許してもらえると私が勝手に思っているんです。メンバーの皆さんはどうおもっているのかわからないのですが。
Naka)一般的な上昇志向や,働かないといけないとか,規範にしばられなくてもいいと思いますよ。大人はこれっていう固定観念にこだわらなくてもいいとちゃうかな。
T)「大人」っていう事自体が,責任を果たせていないのがしんどくて。
「普通は」って言われることもできなくて,「普通」って言葉がとてもしんどくて,せめてこのLPWでは,許してもらえる場所に。
Naka)Tさんが「おりる」と表現されていますが,自分の生き方を見つけていったらいいですしね。
──調子が良くなりすぎて迷惑をかけたという具体的な内容や,どういう場面で調子がよくなりすぎたのかを教えてください。
T)ギターがとまらなくなったり,大切な話を聞かないといけない場面で人の話が聞けなくなったり。
ライブ前の練習でテンションが上がりすぎて,本番を休んだこともあるんです。
──ブラックバーズのメンバーはお互いに許し合えると感じるエピソードを教えてください?
T)僕が勝手にそう思い込んでいるだけかもしれないので,周りの意見を聞いてみたいです。
Naka)さっきの本番を休んだ話で言えば,出演先との関係があるので出られるならきちんと出演した方が良いとは思うんですが,Tさんが来れないなら他のメンバーで併せていこうと。
バン)誰かが休んだとしても怒っている人は誰もいないですよ。
T)確かにみんな色々と事情があるので,逆に心配しますね。
──バンドリーダーでアコースティックギターのNAKAさんに最後お話を聞きます
──2年前のリブリブライブではベースでしたが,今回アコースティックギターを演奏されていましたね。
Naka)バンドのメンバーの空いたところが担当なので,今回山ちゃんがベースを弾いていたので僕がギターになりました。曲の都合もあります。
──トークの最後にメンバーの普段なかなか聞けない意見を聞けたと言っておられましたがどういうところでしょうか?
Naka)一番大きかったのはバンさんの音楽に対する思いですね。普段そんな話を改まってきくこともないですから。人工内耳の手術をしてからバンドに再び戻ったときの思いなど...
さっきのAkiさんの「昔は人と喋るのが苦手で」という話もしらなかったし。自分のことをそんな風に顧みておもっているんだなぁとか,バンドやってよかったとか聞けてよかったです。
バン)いつもはもっとくだけたことしかしゃべらないですからね。
──2年前のリブリブライブ(*1)の時の比べて,Black Birdsとして変わったところ,また変わらないところを教えてください。
Naka)2年前はプロの方にリードしてもらってついて行くという感じでしたが,メンバーのレベルもあがってますし,主体性というか自分からあれこれやりたいというのが出てきました。みんなで話し合ってするバンドの形ができてきたかなぁって。
変わらないところは,各メンバー個人はそれぞれ変わらないなぁと思います。
*1)リブリブライブ 2019年9月14日Live!Live!Live!2019(リブリブライブ2019)として,ロームシアター京都ノースホールにて,「孤立しがちなミュージシャン達のセッションとトーク」というタイトルでプロミュージシャン2人を招いてブラックバーズと共に行った演奏とトーク。
──はじめはLPWの利用者として,そしてピアサポーターとして10年ぐらい活動されたとありますが,ピアサポーターのことを詳しく教えてください。
Naka)病気,ひきこもり,障がいなど様々なジャンルで,支援者というよりも,同じ当事者として横に並びながらサポートする人をピアサポーターと言います。京都府や京都市にひきこもりのピアサポーター制度があります。活動として自分の体験を支援者や親御さんに話をしたり,LPWみたいな場所で当事者の人と一緒に話をします。1:1だと緊張される方もおられるので,音楽療法の先生と当事者の方がやっているところに一緒に横に入ったりします。
他にピアグループというものもあります。もっと平等な立場として当事者の会みたいなものがあります。
──ピアサポーターになるのに資格はいるんですか?
Naka)自治体ごとに制度があるので決まった形ではないと思うのですが,ピアサポーター認定制度は研修をうけて登録しました。僕の場合は京都府の事業の中でピアサポーターを雇う枠があったり,他の事業所などにもスタッフとして関わらせてもらいました。
──当事者から理事長になられるケースをあまり聞いたことがないのですが,理事長になってしんどいこと,わかったこと,良かったことを教えて下さい。
Naka)前の理事長は10年で仕事を辞めると言われていたんですよ,スタッフとして対外的な実務も担っていたこともあり,理事長を引き受けることになりました。
しんどいことは,いくつかあるんですが,ここではしゃべれないようなことばかりです!(笑)
わかったことというよりも,今までと立場が違うので,前理事長のまねはできないし,代わりにもなれないですが外からの目を意識しだしました。
当事者で理事長ということで期待されるというか,ちょっと少しでも良い前例にならないとと気負うところがあるので,下手な面をだせないなぁという感覚があります。
ぼく個人的には,当事者ということに重きを置いていないのですが,当事者にこだわる人って結構多いですし,当事者が理事長になったということで勇気づけられる人もいると思うんです。でも,当事者だからそうでない人と違う,他の人ができないことができるってこともないので,ギャップはあると思います。
T)話の途中で割って入ってすいません。
僕は,LPWに来る前から(精神障害者保健福祉)手帳を持っていたんですが,クリニックに行っても当事者しかいなかったんですよ。
僕がLPWに来た時から,ピアサポーターという「当事者よりの支援者」がいるということが初めての経験でした。当事者の気持ちに寄り添える人っていうか。
私は,当時統合失調症でひきこもった形になって,治療をしていくうちに発達障がいが見つかったり,他の人でLPWに入ってこられて後から(精神障害者保健福祉)手帳を申請されたケースもありますし。
Naka)よくLPWで話をするのですが,精神障碍者保健福祉手帳や障害者年金,就労継続支援B型事業所等の福祉の利用とか,抵抗がある方っておられると思うのですが,僕自身はそこにあまり抵抗がないんです。ずっと薬を飲んでいるし,(精神障害者保健福祉)手帳も持っています。LPWの方針としても,ライフプランというのがあり使える制度は有効活用というのが基本的な考え方です。
バン)Nakaさんを見ていて思うのですが,普段は事務所で仕事をしていて,僕らが来たら楽器を持って歌って,また事務に戻られる。しんどいですよ(笑)。
T)Nakaさんみたいに実は手帳を持っていて,メンタルは苦しいけど働いていますという人は,僕の周りにはいなくて,オリンピックに出てるすごい人みたいです。
Naka)見えてないだけで,世の中本当はしんどいけれど働いておられる方も多いと思います。
──理事長になってよかったことは何ですか。好きにやれるようになったとか?
Naka)全然好きにやれないです(笑)。別に裁量は増えていませんし,実権も握っていません。でも話をさせていただく機会が増えたので,自分の気持ちをしゃべるというのはできます。
でもバンドではあまり自分の気持ちを出さないようにしています。この曲をしようって職権乱用になっても困るので(笑)。
T)給料をもらって背筋が伸びるとかはないんですか?
Naka)背筋は猫背なんです(笑)。