社会包摂とアートシンポジウム

孤立しがちなミュージシャン

Black BIRDS LIVE&TALKを振返って

音楽でふみだす一歩。ひきこもり,社会不安...

4.振返り ー トークの5分間の消耗が激しかったです/持続できる生活・活動

──メンバーのみなさんにBlack Birdsの結成のきっかけから今までをお聞きします。

振返り ―― トークの5分間の消耗が激しかったです。

──バンド結成のきっかけは何ですか?

 

Naka)バンドとして名前をつけてと言われると最近ですね。

 

Aki)2019年6月に,五条の町家(まちや)で演奏したのがバンドとしてはじまりかな。

 

T)LPWで祇園祭をテーマに絵の展覧会をしていたときですかね。

 

バン)僕の記憶では2019年5月に法然院悲願会(*1)が初めてで,その時に山ちゃんがものすごく緊張していたのを覚えているんですけどね。

 

Naka)まだその時はBlack Birdsという名前はなかったですが,メンバーは一緒でしたね。バンドの前から法然院には出させていただいていました。

 

*1)法然院悲願会(ほうねんいんひがんえ)京都市左京区にある浄土宗単立寺院。年に2回「悲願に生きる菩薩行の実践」として法要と共に,茶会,展示,コンサートなどが開催されている。

法然院HPより http://www.honen-in.jp/

 

──バンド結成のきっかけは何ですか?

 

Naka)2012年8月にAKIさんが音楽イベントに出ることになったので,みんなで見に行ったんですよ。そのときに関係者の方から,「ギターを弾けるんだったら次のときに弾いたらええやん」と言われて,LPWでギターを買おうとなって,当事者の音楽活動がはじまったんです。

 

2012年11月に「三人展」という絵の展覧会をして,最後の日に打ち上げみたいな形でちょっとギターを弾いて歌いたい人が歌ったんです。

 

T)僕は新聞で「三人展」のことを見て,そこに壁にかかっているギターを見て遊びに来たんです。

その後,LPWでは少しずつ曲をつくろうとしたり,練習もあって。

 

Aki)そのとき大阪のイベントにでることもあって,個人的に大変な時期でもあったし,プレッシャーがかかったなぁ。

 

バン)色々メンバーも休んだり変わったりしている間に,僕も2018年に耳の手術をして休んでいるんですが戻ってきた2019年頃には「バンド」という言葉をよく耳にしていました。その頃他のメンバーも再度集まり始めた感じですね。

 

──Black Birdsの名前のきっかけは何ですか?

 

バン)ちょうどその時期に,ローリングストーンズのハッピーという曲をしていて,最初はローリングストーンズの曲「Paint It Black」も候補にあがっていたかな。

 

Naka)バンドのイメージカラーを決めようとなって,黒になったので,ビートルズのBlackbirdからバンド名を決めたんです。

 

T)僕は個人的には,前の理事長が鳥が好きだからと思っています。

 

Naka)それはTさんだけが,言うてますけどね(笑)。

 

──当日所用で参加できなかったギターのNishiさんにお話をお伺いします?

 

Nishi)本格的にバンドで演奏したり,ライブに出たり,情報交換したり刺激になっています。バンドに入る前は,一人で気が向いたときに弾くぐらいで人前で演奏することはなかったんですが,今回は出られませんでしたがまた是非出演したいです。

 

Naka)TさんとNishiさんのキャラクターが真逆で,動と静。Nishiさんは基本に忠実なんですよ。

 

バン)僕は人工内耳でしょ,バンドで合わせていて爆音で音がわからなくなったとき,Nishiさんのギターがすっと聞こえてくるんですよ。それが好きなんですよ。

 

Nishi)音作りも,最初はよくわからなかったんですが,最近はできるようになってきました。

 

──メンバーそれぞれから9月11日の撮影のことを振返ってひとこともらえますか?

 

Aki)急に決まったので,ぼく個人は変な意気込みがなく肩の力が抜けていて逆によかったなぁと思います。またみんなの士気が上がっていて助かりました。

 

T)自分たちがロームシアターの搬入口のエレベーターから楽器の搬入や搬出をし,楽屋口から出入りするところが,ミュージシャンのDVDに入っている最後の特典映像みたいな感じがして感動しました。

機材搬出のエレベーターで,ロームシアターのスタッフの方と一緒に運んでいるときに「まるでミュージシャン,音楽をやっている人みたい。」と思わず口からでてしまいました。

 

バン)Tさんと似ているけど,あの日1日がセットの中にいる感じですごくカタルシスがありました。

最後にNakaさんと喋っていて「ああ,終わったぁ」って。

あと,照明が暗くて神妙な気持ちになりました。暗い中で青いライトが付いていて自分の演奏に酔っちゃって,ドラムをたたくのも久しぶりというのもありましたし,「ドーン,パーン,ドーン,パーン」てやっているうちに「俺,カッコイイ(笑)」って。

皆で合わせてというのと,自分に酔うの繰り返しが面白かったです。

 

Naka)バンドっていう形で外で演奏するのが本当に久しぶりで,照明など本格的で緊張しました。実はコーラスパートは,毎回ハモるパートが違ったり,忘れたり。

Hey Judeはみんなが盛りあがっているので,本気の力でアコギも弾かせてもらって,家ではうるさいので弾けないですし,本当に楽しかったです。

でも,リハーサルや演奏よりも,トークの5分間の消耗が激しかったです(笑)。あれであらゆるエネルギーを使い切りました。

 

バン)演奏と喋る緊張は全然違うんですよね。僕もぐったりしました。

 


持続できる生活・活動

──就労についてのみをゴールとしない。LPWの特徴的な活動,音楽部のことアート活動のことなど教えてください。

Naka)就労することも一つの選択肢ですが,福祉も含めた様々な社会資源や制度も活用しながら,その人が持続できる生活・活動を行っています。特にLPWではアート・音楽などの自分が好きなことを通じて社会と繋がりを持つ活動を支援しています。

アートだと展示会などのイベント開催・参加やポストカードなどの商品制作・販売等。音楽だとライブ演奏の開催・参加が多くなっています。

 

水曜日に前半は音楽療法を,後半はバンド演奏指導があるんです。

 

Aki)音楽指導の先生からはサジェスチョン(提案)があって,それで続けられたと思います。

 

バン)和気あいあいとやっています。月曜日と金曜日も練習があって月曜日は月に2回ギターの指導があるのでその日は出席率も良いかな。

 

──地域とNPOにつながりについて,LPWが大切にしておられる地域活動や人と人とのつながりのことを教えてください。

Naka)特に事務所がある,左京区下鴨周辺の地元地域との関りを大切にしてきました。地域での交流イベントや教会のクリスマス会など,行事に合わせて参加させていただいたり,アート作品の展示会や歌声喫茶など地域の方々に参加していただけるイベントを開催しつながらせていただいています。

 

──音楽活動以外のLPWの今後の活動について教えてください。

 

Naka)現在,「第1回京都絵画公募展 Open Call for Hikikomori Artists」として,京都市内のひきこもり当事者やご家族,支援者の方のアート作品の公募展を企画中です。2022年1月の開催に向けて,2021年12月10日まで作品の応募も受付しています。ご興味のある方は,当法人のHPに詳細を記載していますので,ぜひご覧ください。

 

NPO法人若者と家族のライフプランを考える会HP:https://lpw.kyoto/

第1回京都絵画公募展HP:https://lpw.kyoto/news/1194

 

──最後に京都のひきこもりの支援について教えてください。

 

Naka)一口に「ひきこもり」といっても,その状態や背景は実に様々です。当事者一人ひとりや地域によっても色々なニーズがあります。京都市・京都府ではそれぞれひきこもり相談の窓口がありますので,ひきこもりのことで悩んでおられる方はまずご相談されてみていただければと思います。

 

京都市窓口 「よりそい・つなぐ」相談窓口(京都市ひきこもり相談窓口)(京都市社会福祉協議会)

https://www.syakyo-kyoto.net/yorisoitsunagu.html

京都府窓口 「京都府 ひきこもり支援」https://www.pref.kyoto.jp/kateisien-sogo/29datuhikikomori.html